コロナ禍の株高　実際の景気もよくなった？

柳原美砂子（やなぎはらみさこ）　毎日新聞（まいにちしんぶん）　経済部（けいざいぶ）副部長（ふくぶちょう）

　アメリカのニューヨーク株式市場（かぶしきしじょう）で１１月（がつ）２４日（か）、株価（かぶか）の代表（だいひょう）的（てき）な目安（めやす）である「ダウ工業（こうぎょう）株（かぶ）３０種（しゅ）平均（へいきん）」が、史上（しじょう）初（はじ）めて３万（まん）ドルを突破（とっぱ）しました。東京株式市場（とうきょうかぶしきしじょう）でも、株価（かぶか）の目安（めやす）の「日経平均株価（にっけいへいきんかぶか）」が２９年（ねん）半（はん）ぶりの高値（たかね）となりました。新型（しんがた）コロナウイルスの感染拡大（かんせんかくだい）で、世界経済（せかいけいざい）は大（おお）きく落（お）ち込（こ）んでいるはずなのに、なぜ株価（かぶか）がこんなに上（あ）がるのでしょうか。

　ダウ工業（こうぎょう）株（かぶ）３０種（しゅ）平均（へいきん）は、アメリカの新聞（しんぶん）「ウォール・ストリート・ジャーナル」が１８９６年（ねん）、アメリカの代表（だいひょう）的（てき）な会社（かいしゃ）の株価（かぶか）の平均（へいきん）を発表（はっぴょう）したのが始（はじ）まりです。どの会社（かいしゃ）の株価（かぶか）を使（つか）うかは時代（じだい）に合（あ）わせて入（い）れ替（か）えられ、現在（げんざい）は日本（にっぽん）でも有名（ゆうめい）なアップルやコカ・コーラなど３０社（しゃ）が採用（さいよう）されています。

　ダウは新型（しんがた）コロナの影響（えいきょう）で３月（がつ）下旬（げじゅん）には１万（まん）８０００ドル台（だい）まで暴落（ぼうらく）しました。しかしその後（ご）は、アメリカ政府（せいふ）が仕事（しごと）を失（うしな）った人（ひと）にお金（かね）を配（くば）るといった経済（けいざい）対策（たいさく）をたくさんおこなったことなどから、徐々（じょじょ）に回復（かいふく）していました。

　さらに１１月（がつ）に入（はい）り、外国（がいこく）の大手（おおて）製薬会社（せいやくがいしゃ）が相次（あいつ）いで、新型（しんがた）コロナの感染（かんせん）予防（よぼう）に効果（こうか）があるワクチンができたと発表（はっぴょう）しました。また、なかなか勝敗（しょうはい）が決（き）まらなかったアメリカ大統領（だいとうりょう）選挙（せんきょ）も、民主党（みんしゅとう）のバイデン前（ぜん）副大統領（ふくだいとうりょう）の勝利（しょうり）が確実（かくじつ）となり、新（あたら）しい政権（せいけん）の見通（みとお）しが立（た）ってきました。ワクチン登場（とうじょう）やスムーズな新政権（しんせいけん）発足（ほっそく）によって、混乱（こんらん）していた経済（けいざい）が元通（もとどお）りになるという期待（きたい）から株価（かぶか）は上（あ）がり、３万（まん）ドル突破（とっぱ）につながりました。

　ただ、世界（せかい）で新型（しんがた）コロナの感染（かんせん）が再（ふたた）び広（ひろ）がる中（なか）、実際（じっさい）の景気（けいき）がよくなっているとはいえません。世界各国（せかいかっこく）で経済（けいざい）対策（たいさく）のために配（くば）られた大量（たいりょう）のお金（かね）が株式市場（かぶしきしじょう）に向（む）かい、株価（かぶか）を押（お）し上（あ）げているのが実情（じつじょう）です。ワクチンについてもまだ分（わ）からないことが多（おお）く、新型（しんがた）コロナの状況（じょうきょう）次第（しだい）で株価（かぶか）が大（おお）きく下（さ）がることもありそうです。

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　経済部（けいざいぶ）で、省庁（しょうちょう）や銀行（ぎんこう）、メーカーなどの取材（しゅざい）を担当（たんとう）。趣味（しゅみ）は散歩（さんぽ）や山歩（やまある）き。学生時代（がくせいじだい）は少林寺拳法（しょうりんじけんぽう）をやっていました。１９７３年福岡県生（ねんふくおかけんう）まれ。好物（こうぶつ）は、博多（はかた）では生（なま）で食（た）べることが多（おお）いサバ。